コードギアスについて語ったり二次創作したりするブログです。
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(このタイトルひどいな)
和泉サユさんのコピー誌に寄稿した小説です。コピー本完売しちゃったらしいのでここに。
サユたんはスザク大好きっこなので、スザクを書いてということでしたので、なんと珍しい「藤堂×子スザク」を書いてみました。とはいえ、もとはルルーシュサイドのお話を作っていて、そのサイドストーリーとして生まれたのがこのSSでございます。
5月の新刊はこのルルーシュサイドのお話です。
出ればね!!!
和泉サユさんのコピー誌に寄稿した小説です。コピー本完売しちゃったらしいのでここに。
サユたんはスザク大好きっこなので、スザクを書いてということでしたので、なんと珍しい「藤堂×子スザク」を書いてみました。とはいえ、もとはルルーシュサイドのお話を作っていて、そのサイドストーリーとして生まれたのがこのSSでございます。
5月の新刊はこのルルーシュサイドのお話です。
出ればね!!!
だんっ、と派手な音を立てて、少年の身体が床に打ち付けられる。投げ飛ばしたのは自分自身だというのに、その勢いに藤堂は思わず冷や汗をかいた。
「スザク君、大丈夫か!」
声を掛けると、少年の指先がぴくりと動いた。痛そうにしかめた表情のまま、彼は声を漏らす。
「ってえ……」
「その様子なら、大丈夫だな」
そう言いながら、藤堂は違和感を覚えていた。いつもならこの程度の技など簡単にかわされてしまうのに。今日の彼は、どこかおかしい。
スザクは床に片手をついて、ゆっくりと身を起こす。そして再び構えの型をとると、キッと藤堂を見上げた。
「先生、もう一度、お願いします!」
藤堂はスザクを見下ろす。その瞳はいつもと変わらず強い決意をたたえているように見えるけれど。
「いや、今日はもう終わりにしよう」
「えっ、どうしてですか」
藤堂の言葉に、スザクが驚いたような、困ったような表情をする。
「さっき、左手をひねっただろう。私が気がついていないとでも?」
「あっ……」
スザクはばつが悪そうな顔をして、ぱっと左手を隠す。
「す、すみません……」
そのままうつむいてしまったスザクに、藤堂は息を吐きながら言う。
「スザク君、怒っているわけではないんだ。稽古とはいえ、気を抜いていては大きな怪我につながる。今日の君は、どうも集中が足りない。
何か、ほかに考え事でもしているようだ」
その言葉に、スザクは顔を上げた。
「やっぱり先生にはわかるんだ……」
そういった少年の表情は。何故か悲しそうで、藤堂の心に不思議な痛みを感じさせた。
「私で良ければ、話を聞こう」
スザクが頷いて、藤堂の前に正座する。藤堂も板張りの床に腰を下ろして、彼に向き合った。スザクは膝の上でぐっと手を握りしめる。
外では雨が降り出したようで、道場には雨音が響いている。いつもより少し湿度を帯びた床。
「先生、強い、って何だろう」
藤堂を見つめる翡翠の双眸は、湿度と熱を帯びて潤んでいた。まだ幼い大きな瞳の底に、戸惑いの色が揺れている。
「俺は、強くなるためにこうして稽古をしてるはずなのに……力があれば、それが強いってことじゃないのかよ」
答えを問うというよりも、まるで救いを求めるような口調だった。藤堂はスザクの瞳を見つめ返す。すがるような目線。自分の正義を信じてきたこの少年を、ここまで戸惑わせるその原因。
藤堂は、それを何とはなしに知っていた。
「……ブリタニアの王子のことか」
その単語を出すと、スザクの瞳がいっそう大きく見開かれた。藤堂の予想は正しかった。
ブリタニアの王子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。そしてその妹、ナナリー。彼らが枢木神社に来てから、スザクの態度は少しずつ変化していた。強いことが正しいことだ、そう信じて疑わなかったスザクが、他人を気に掛けるようになった。自分より弱い存在を認めるようになった。
それは喜ばしいことだと、藤堂は思っていたのだけれど。もしかしたら、それはこの幼い少年の正義に、なにかしらの影響を与えていたのかもしれない。
「ルルーシュは」
スザクはその名前を少しためらいながら口にする。
「あいつは……弱いくせに、強情で、意地っ張りで、一人で傷つくことばっかり選んでる気がする。俺に言えば、あんなやつらなんか簡単にやっつけてやるのに」
憤りと悔しさとが入り交じった声でスザクは言う。その感情はルルーシュではなく、本当は彼自身に向けられているのかもしれない。ふと藤堂はそう感じた。
その証拠に、膝の上で握りしめた拳が小さく震えている。
「そうか……スザク君は、彼を守りたいんだね」
藤堂の言葉に、スザクははっと息をのむ。
「そんな、あいつはブリタニア人だぞ! 俺はっ……」
険しい表情を浮かべ、感情にまかせて口を開く。けれど、その後に言葉は続かない。スザクは、きつく唇を噛んだ。小さな身体の中では、言葉にならない何かが激しく渦巻いているのだろう。
「スザク君」
藤堂はスザクへと手を伸ばした。指先が柔らかな髪に触れる。そのままゆっくりと頭をなでると、彼の身体のこわばりが少しずつ解けていく。
「強さにはいろいろな形がある」
スザクは藤堂を見上げる。その視線はまっすぐで、彼の性格がそのまま映し出されている。
「それは本当にたくさんあるんだ。君も、彼も、そして私も。まだその全てを知らない」
「先生も……?」
藤堂の言葉にスザクは驚いたようだった。
「ああ、だから私は君の問いに答えをあげることは出来ない」
「そう、なんだ」
彼の顔に影が差す。ゆっくりと、藤堂の言葉の意味を飲み込みながら。少年の表情は驚きから落胆へと色を変える。藤堂はその様子を静かに見つめていた。
この幼い少年は、自分の言葉の意味をすべて理解できないだろう。スザクにはまだそのための経験が不足している。それでも、と藤堂は思う。
藤堂は言葉を続けた。
「ただ、彼の強さと、君の強さは違う種類のものなのだろうね。スザク君。君に必要なのは、まずそれを認めることだ」
「そんな、あいつに強さなんて……!」
思わず身を乗り出したスザクをいさめるように、藤堂は彼の肩を両手でとどめる。自分の手のひらに収まってしまう小さな両肩。
「力というのは、強さの尺度のひとつだ。確かに力という尺度でルルーシュと君を比べたら、君の方がずっと上だろう。
でも、スザク君、君は彼にそれとは別の強さを感じたんだろう。だから私に尋ねたんだ。違うかい?」
今度は、藤堂から目線を合わせた。痛いほどまっすぐな少年の目線に負けないよう。
道場の中に響き渡る雨の音。心臓の鼓動よりも速いそのリズムが、自分の中の何かをかき立てている。スザクの肩に触れた両手が熱い。
それは、どちらの熱なのだろう。
スザクは口を開く。
「違……わない」
呟くように、一度。そして確かめるようにもう一度。
「俺は、ルルーシュを守りたいんだ」
スザクの拳に力がこもっている。けれどそれは、先刻までのような、感情の渦にあらがうがためのものではない。
「あいつは、本当は強いやつだって……卑怯な奴らに負けたりなんかしないってわかってる。だけど、一人で傷ついてるルルーシュを見るのは、もう嫌なんだ。
だから、俺は強くなりたい。今の俺じゃ、あいつを守ってやれない、それが悔しくて……つらいんだ」
「君は……」
藤堂は思わず笑みをこぼした。彼の正直さがあまりにも美しく、好ましいものだったから。
「それでは、君はやらなければならないことがあるな」
「先生、それは?」
彼が藤堂を見る。その心に届くよう、ゆっくりと藤堂は語りかける。
「君と彼とが、ともに持つ強さを見つけなさい。力だけでもなく、傷つくことだけでもない、そんな何かを」
今は理解できないかもしれない。
それでも、彼は考え続ていくだろう。
願いというよりも、確信に近かった。この少年ならば、遠くない未来に答えを見つけるだろう。
その、まっすぐな瞳で。
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