コードギアスについて語ったり二次創作したりするブログです。
気まぐれ更新。
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過去に書いた小説の移設。
バレンタインSS「ランペルージのバレンタイン」です。
バレンタインSS「ランペルージのバレンタイン」です。
ランペルージのバレンタイン
クラブハウスにはいると、甘ったるい匂いが鼻腔にまとわりついてきた。
「うっ……!?」
ルルーシュは思わず声を上げる。
「何だ、この匂いは……」
クラブハウスの中へ向かうにつれ、匂いはさらにきつくなる。そして、ダイニングの扉を開けたその瞬間。
「お兄様!」
嬉しそうなナナリーの声と、そして、芳醇なチョコレートの香りがルルーシュを出迎えた。
「お帰りなさい、お兄様!」
ルルーシュを振り向いたナナリーの頬には、チョコレートが飛び散っている。
「……た、ただいまナナリー。ところで、これは……?」
「チョコレートだ、見てわからんのか」
ルルーシュの問いに答えるかのように、ナナリーの車椅子の陰からC.C.がぬっと姿を現す。
「C.C.!? お前いったい何を!?」
「今日はバレンタインじゃないか」
慌てるルルーシュに、C.C.はしれっと言ってのける。
「……バレンタイン?」
「まあ、お兄様ってば。チョコレート、貰わなかったんですか?」
ルルーシュの言葉に、ナナリーが尋ねる。その声には、やや驚きが混じっているようだった。
「ああ、そういえば校内が騒がしかった気が……」
「まあ」
ナナリーは小さく声を上げ、そしてくすりと笑った。
「じゃあ、お兄様にはわたしからチョコレート、差し上げますね」
「ありがとうナナリー、嬉しいよ」
ルルーシュは笑顔を浮かべて、ナナリーの頭を撫でる。ナナリーはほんの少し頬を染めて、ルルーシュの手を受け入れた。
「まだ固まっていないので、夜になっちゃいますけど」
照れ笑いを交えて言うナナリーの手元を見ると、まだチョコレートのボウルを湯せんにかけている。
「何か手伝おうか?」
ルルーシュが手を伸ばすと、ナナリーは慌ててボウルを隠そうとする。
「えっ、あ! ダメです!」
「危ないナナリー!」
ルルーシュが叫ぶのと同時に、ナナリーが小さく悲鳴を上げる。熱されたボウルの温度に、ナナリーは反射的に手を離してしまった。
ボウルが派手な音を立てて床に落ちる。
チョコレートはゆっくりと床に広がってしまった。
「ああっ、ど……どうしましょう」
ナナリーが悲しそうな声を上げる。
「落ち着いて、大丈夫だよ、ナナリー」
ルルーシュはナナリーの隣に膝をつき、顔の高さをそろえて彼女をなだめる。
「チョコレートは冷えたら固まるから。そしたら、咲世子さんと一緒に掃除をしよう。今はまだ熱いから、さわっちゃダメだ」
「はい……お兄様」
ナナリーはしょんぼりと肩を落とした。
「でも、これでお兄様にチョコレートを差し上げることが出来なくなってしまいました」
「チョコレートなら、また作ればいいじゃないか」
「いえ、今日でなくてはダメなんです!」
珍しく食い下がるナナリーに、ルルーシュは首をかしげる。
「ルルーシュ、お前は本当に、鈍感だな」
頭上から、C.C.のあざけるような声が降ってくる。
「バレンタインは、大切な人にチョコレートを贈る行事なのだろう? 少しは彼女の気持ちも考えろ」
C.C.はそしてふいと顔を背けると、ダイニングを後にした。
ルルーシュは、悲しそうな表情のままうつむいてしまったナナリーの顔を見やる。普通に生活するのも精一杯だというのに、チョコレートを作るなんて、どんなにか大変だったろう。
「……私、ダメですね。お兄様に迷惑を掛けてばかりで……。せっかくのチョコレートも、こうして台無しに」
ルルーシュは思わずナナリーの頬に手をのばした。
「……お兄様?」
ルルーシュの指先が、ナナリーの頬からチョコレートをぬぐい取る。ルルーシュはその指先を舐めて、そして笑った。
「大丈夫、おいしいよナナリー」
「お兄様……!」
ナナリーは頬を赤く染めて、嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに、微笑んだ。
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